グッドバイ
隼人が繰り返す、指のリズム。美里は徐々に理性が効かなくなってきた。シワの寄るシーツの上で、のたうち、震える。
「出してみる?」
「嫌っ」
「嫌じゃないだろ」
「駄目っ」
隼人の指が美里に新しい世界を見せていく。自然と両足は大きく開き、腰が浮き始めた。
「気持ちいいなら、いいって言いなよ」
「ああ、も……う」
頭が真っ白になった。経験したことのない、快感の頂点を超える。
自分のものとは思えない、狂ったような叫び声。痙攣する身体。汗ばんだ肌にシーツが擦れる。
美里の身体から、一気に力が抜けた。
「イッたな」
隼人の満足そうな声が聞こえた。
美里は肩で呼吸を繰り返した。一線を越えてしまった、諦めにも似た虚無感。力が入らない。
隼人は縛られていた美里の腕を解いた。
ベッドの上で動けない。時たまぶり返す脚の震え。窓ガラスに映る自分の姿が視界に入った。その脇に座る男が、Tシャツを脱いで、ベッドの下に投げ捨てる。
視線を上に戻すと、上半身裸の隼人がいた。ナイトスタンドのオレンジ色の光が、引き締まった腹部に淡いグラデーションを作る。前髪を右手で掻き上げて、全てを失った美里の白い肌を、じっくりと見つめていた。
美里は思わず目を閉じる。
「ほらまた、見ない振りをする」
隼人の大きな手が、美里の頬をぐっとつかむ。その強さにひるんだが、美里は目を開けられなかった。
「俺を見ろ。逃げるな」
デニムのボタンをとる音が聞こえた。美里は身を縮め、両足を閉じる。
「逃げられないんだよ、もう」
隼人は言うと、美里の膝を乱暴に割った。
「待って、嫌だ」
「お前を抱いてるのは、誰だ?」
貫かれる衝撃。美里は叫んだ。身体が弓なりに反り返る。絶頂を経験した後の敏感な部分が、燃えるように熱い。はしたない程の声が出た。
「お前を感じさせてるのは、誰なんだ?」
軋むベッド。淫らな喘ぎ声。まるで犯されるようにセックスする。