私を呼んだ。
「‥‥んーー!終わった!」
今日も仕事が終わった。
いつものように休憩室で里美と待ち合わせ…と思っていると、
ブブブ
あ、里美からメール。
『仕事トラブル発生!!ごめん!!先に帰ってて!!』
あーらら、また何かやらかしたなこりゃ。
仕方なく1人で帰ろうとすると、
「おつかれ。」
目の前にいたのは
「か、加藤さん!」
「今終わり?」
「あ、はい!終わって帰るとこです!」
「‥‥送ろうか?」
「え!!いやいや!そんな大丈夫です!」
「遠慮するなよ。色々話とかもしたいし‥‥」
「え、でも私割と近いんで‥‥」
「いいじゃん、送らせてよ。」
「‥‥はい、それじゃあお言葉に甘えて‥‥。」
「よし!帰るぞ!」
‥‥えぇ‥‥どーしよ、ほんと。
里美ぃ~私加藤さんに送ってもらうよぉ~
私は加藤さんと出入口に向かった。
会社を出てちょっと行ったところに会社専用の駐車場がある。
「伊藤家どこだっけ?」
「〇×町です。」
「はは、ほんとだ。割と近いな!」
「言ったじゃないですか!」
「ハハハ!!」
笑いながら加藤さんは私の頭をなでる。
‥‥もう‥‥加藤さんったら‥‥。
すると後ろから聞き覚えのある声がした。
「凛子さん!」
私は何故かその声に敏感に反応してしまった。
振り返ると‥‥やっぱり。
翼がたっていた‥‥。
「‥‥帰りましょう。送ります‥‥。」
翼は加藤さんのことを少し鋭い目で見ながら言った。
「あ‥‥でも‥‥」
「ごめんね、君、誰だかわからないけど彼女は今日僕が送ることになってるから。遅くならないうちに帰りなよ。」
「‥‥凛子さんは俺が送ります。」
「君、高校生だろ?子どもは早く帰りなさい。」
「俺が送ります。」
「僕が送る。」
「‥‥あの‥‥」
私はにらみ合う2人の間に入ろうとしたが、
「さ、早く。」
加藤さんは私の腕をひっぱり、車に乗せた。
そのまま加藤さんは車を出した。
振り返るとまだ翼がたっている。
少しつり上がった綺麗な目が少し悲しそうに見えた。
‥‥あ、また‥‥。
‥‥私、あの目‥‥知ってる‥‥。