私を呼んだ。
距離
凛子さんとのデートのあと、
自然と顔がほころんだ。
俺の言葉に頬を染める凛子さんが可愛くて
抱きしめて抱きしめて抱きしめたかった。
俺はあなたに近づけましたか。
俺の言葉を少しでも受け止めてくれますか。
そんなことを考えて歩いていた。
「翼。」
後ろから声がした。
「‥‥咲姫‥‥」
そこには幼なじみの江口咲姫がいた。
「‥‥今帰りなの?」
「うん、」
「どこいってたの?今日誘ったのにダメッていってたじゃない。」
「‥‥デートしてた。」
「‥‥デート‥‥?」
「うん、言ってただろ?ずっと好きな人がいるって。」
「‥‥あれ、ほんとだったんだ‥‥。」
「当たり前だろ、嘘なんてつかねえよ。」
「‥‥じゃあね、帰る、バイバイ」
「‥‥?あ、送ろうか?暗いし‥‥」
「いい。じゃあね」
咲姫は走っていった。
どこか怒っているようにも見えた。
「‥‥まぁ、咲姫がクールなのはいつもの事だしな。」
‥‥いや、ほんとは気づいていた。
咲姫がずっと俺を好きでいてくれていた事を。
だから俺は咲姫に話した。
〝ずっと好きな人がいる〟と。