私を呼んだ。




私が翼に興味を持ったのは何故だろう。

私もわからない。


私と同じで1人でいたからかな。





いや、この子と私ならいいパートナーになれると思ったからかもしれない。




そう思っていた。






‥‥いや、わかってる。



知ってたんだ本当は翼のこと。


小学校に上がった時から。







入学式の日だった。


翼はやっぱり出会った時と同じ目をしていた。


入学式なのに全然嬉しそうじゃなくて、お母さんなのかお母さんにしてはちょっと歳がいってるような女の人といた。




私は母親といたが、母親は私なんか見向きもせず、他の母親達と話し込んでいた。




私は校庭で1人砂場にいた。

特になにもすることもなかった。


すると


ガササッ



校庭のフェンスが破れていてそこから大きい野良猫が入ってきた。


シャーーーッ!っとこちらを威嚇して近づいてくる。


動物は嫌いではないが、小学1年生だった私には大きく、とても怖く感じた。


「きゃっ!」




私は足が震えて動けなかった。





その時、後ろから1人の男の子が歩いてきた。






翼だった。







翼は入学式でもらった紅白饅頭を片手に持っていた、


するとその野良猫が入ってきたフェンスの穴にそれを投げ込んだ。




すると野良猫は「みゃー!」っといて紅白饅頭を追いかけてフェンスから出ていった。





翼はこちらを見向きもせず歩いていった。




「あ、ありがとう!」


私はいつになく声を張り上げていった。



やっぱり翼は振り向きはしなかった。


聞こえていたのかもわからない。







でもこの時小学1年生だった私の小さな心臓が、いつもより早く動いているのを感じた。














もっと早く走ればよかった。


小学5年生のあの時、




私が先に翼に追いついていれば、





あの綺麗な高校生に勝てたのかもしれないのに。





高校生の方が足が速かった。
高校生の方が目が大きかった。
高校生の方が‥‥綺麗だった。


高校生の方が翼の中の1番になるのが早かった。



もしかしたらこれからもずっと高校生が1番なのかもしれない。












じゃあ私は、



翼の1番近くにいよう。










1番近い女の子になろう。
















それも叶わないと思い知らされたのはやっぱり、








あの高校生に会ってから



翼がどんどん変わっていった時だった。
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