私を呼んだ。
抑えきれなかった言葉。
姉への嫉妬心と共に放ってしまった。
「‥‥え?」
「‥‥美‥‥わたし‥‥!ずっとずっと松井くんがすきだった‥‥松井くんはあの時初めて会って初めてわたしのこと知ったと思うけど‥‥わたしは‥‥ずっと松井くんのこと‥‥、見てた‥‥。」
止まらない。
「‥‥わかってる、松井くんがお姉ちゃんのこと好きなのも、お姉ちゃんには敵わないことも、こんな出来損ないの妹なんか好きになるわけないって‥‥。」
止まってくれない。
「全然お姉ちゃんと似てないし‥‥お姉ちゃんの方が綺麗で頭も良くて、優しくて‥‥。わかってる。美和もお姉ちゃん好きだもん‥‥!でも‥‥」
本音が出る。
「‥‥なにか‥‥なにか一つでも‥‥お姉ちゃんに勝てることってないかなって‥‥。美和の方が勇気あるってこと‥‥、美和の方が早く‥‥1番に松井くんにいった‥‥!それだけでも‥‥認めなくれないかな‥‥。」
ほんとはそう。見て欲しかった。
認めて欲しかった。
姉に一つでも勝ちたかった‥‥。
「‥‥。」
もーやだ。消えてしまいたい‥‥
「‥‥ありがとう。」
「‥‥!」
「似てないなんて言ったけど、似てるよ、凛子さんに。」
「‥‥え、」
「笑った顔、そっくりだ。」
「‥‥。」
姉に似てると言われて嬉しい妹はどのくらいいるだろう。
少なくともわたしには‥‥
今までにない最高の褒め言葉だった。
「こんな俺のこと‥‥想ってくれてるなんて知らなかった‥‥ごめんね、ありがとう。」
「‥‥松井くん‥‥。」
「でも俺、やっぱり、凛子さんが好きなんだ。もう、これは一生かもしれない。」
「‥‥うん、知ってるよ。美和のお姉ちゃんだもん‥‥。たった1人の‥‥。」
「‥‥俺達、ライバルかもしれないね、凛子さんへの。」
「‥‥え」
そう言って彼は切れ長の目を少し細めてニコッと笑った。
わたしもニコッと笑った。
(もう美和、負けてるかもしれないけどね。)