私を呼んだ。
加藤さんは家まで送ると言ってくれたが、
よる所があると言って断った。
加藤さんはどこに行くか察したように微笑むと、
「自分の気持ちに正直な‥‥」
と大きな左手を私の頭にポンポンと2回のせた。
「‥‥ありがとうございます‥‥」
私はこみ上げる涙を耐えて走った。
まだ‥‥まだ間に合うかもしれない‥‥
ここから走って15分くらいかな‥‥
タクシー‥‥はいないな‥‥
よし‥‥。
元陸上部の足、見せてやる‥‥
~ガヤガヤガヤガヤ~
ピンポンパーン
(ただいまより、後夜祭を始めます。みなさん、今日は楽しかったですか?)
文化祭昼の部が終わる放送が入った。
後夜祭も1時間しかない。
昼は店番だったので教室に戻っていた。
窓から見える校門をチラチラと見ていたが、凛子さんは来ていない。
みんな片付けが終わり、校庭に集まっていく。
「おーい!松井!後夜祭行かねーの?」
「あ、俺後で行く」
「お、さては女待ちか??ヒュー♪どこのクラス?」
「ハッハハ、ほら、先いけよ!」
「おう、じゃーな!」
はぁー‥‥女待ちだよ‥‥。
ずーっと。
ため息をつきながら窓から校門を眺めていた。
あ‥‥
走ってきた。
綺麗な女の人が、
また‥‥俺のために‥‥
走ってきてくれた‥‥。
「凛子さん!!!!」
俺はとっさに窓から身を乗り出し
俺は自分でも驚くような大きな声で叫んでいた
校庭でいた人達もこちらを振り返るほど、
その女の人もこちらを見上げた。
そして息を切らしながらニコッと笑った。
そして、あの時と同じように言った。
「ちょっとー!危ないよー!」
あなたは何度俺を助けてくれるんですか。