私を呼んだ。








ピリリリリリッ





朝からテンションが上がるのも仕方がない。


机の上にある携帯が音を鳴らしバイブで少し動きながらこちらに近づいてきているように見えた。




早く出ろ!と。










〝凛子さん〟









携帯の表示を見ると自分はこんなにも反射神経が良かったのかと思うほどのスピードで通話の部分をスライドして電話に出る。







「はい!」



「あ、もしもし?翼くん?凛子です。おはよう」



「おはようございます」




「あのね、この前遊びに来た時誰かお人形忘れてるみたいなの、届けたいんだけど今から大丈夫?」



「あ!すいません!そんな!俺が行きます!!!!」




「え、いいわよ、今公園の所まで歩いたの」




「え!!そこで待っててください!すぐ行きます!!!!」






急いでパーカーを羽織るとつまずきながら靴を履き、財布を後ろポケットに入れ、携帯を左手に握って走った。










「凛子さん!!!!」




「あ、ごめんね、朝早く。」





「いえ!すみません!あ、晴美の人形だ‥‥」




「フフ可愛いね、」





「好きなんですよ最近これ」





「買ってあげたの?」





「あんなオネダリされたら‥‥」






「優しいね、さすがお兄ちゃん」






フフっと笑う凛子さんを見て思わず右手が出た。





俺の右手はフワリと凛子さんの左耳にかかる髪をかきあげた。






凛子さんは見上げるように俺の方を向き、






5秒間目を合わせると







また顔を元の位置に戻した。
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