私を呼んだ。
一目惚れ
一目惚れだった。
入学してサッカー部に仮入部。
平日は陸上部がトラックを使い、トラックの中で新入生のサッカー部が指導を受けていた。
陸上部の新入生は短距離志望の人でも長距離メニューをさせられていて、俺らの指導が終わるまでずっとトラックを走っていた。
前まで中学生だった新入生達が長距離先輩達についていけるはずもなく、新入生達はバラバラに置いていかれていた。
先頭集団の先輩達が着ているのは陸上部のオリジナルジャージだ。サッカー部にもあるが、まだ注文はできていない。
その先頭集団の中に1人、ピカピカの体操服で走る1人の女の子がいた。
本当に一目惚れだった。
ショートカットの髪がなびき、長距離で苦しいはずなのに、清々しく走る横顔。
先輩達に負けない美しいフォーム。
何もかもが綺麗で目が離せなかった。
1年後の高2のクラス替え。
後ろの席になった信条さんが「りん!」と叫んだ方向を見ると。
いた。
いたどころかこちらに来ている。
とっさに立ち上がり、不思議そうに俺を見る凛子になにを話そうか、いや、話していいのか
そんな事を考えながら逃げるように「座っていいよ」と言葉を捨てるように言うと
「ありがとう」
初めて聞いた声に胸が熱くなった。