私を呼んだ。
「‥‥‥‥陽輔‥‥。どうして‥‥」
「大学卒業して、そのままアメリカで過ごそうと思ったんだけど‥‥やっぱり帰ってきたんだ‥‥」
高校の卒業式のあと、メールが入っていた。
〝アメリカいく。元気で〟
とても陽輔らしい内容だった。
「‥‥元気だった?」
「‥‥うん、」
「美和ちゃんも‥‥?」
「‥‥うん。」
顔が見れない。
アメリカ帰りの割に変わらない体型。
彼の細い足元しか見れなかった。
「‥‥結婚‥‥」
「‥‥え?」
「‥‥結婚とか‥‥したの?」
「‥‥ううん、してないよ‥‥」
「‥‥そっか‥‥」
陽輔は息を吐くと同時にそう言った。
「‥‥陽輔‥‥本当に‥‥ごめ」
「なんで謝んの、こっち向いて凛子」
そう言われて改めて顔を見ると、
昔と変わらない面影はあるが、やっぱり少し大人になっていた。
「お兄ちゃん」
声の方を見ると、高校生ぐらいの女の子が立っていた。
「迎えに来たよ、早くかえ‥‥」
その子は私を見ると目を見開いて驚いた顔をした。
「‥‥こんばんは。」
おもむろに挨拶をすると、女の子は斜め下に目線を落として、
「‥‥こん‥‥ばんは‥‥」
と言葉を放った。
「あぁ、ごめん、迎えに来てくれたんだ。ありがとう。
咲姫。」