私を呼んだ。

痛み









間違ってない。私は。







人の大切なものを取ったあの人が悪い。







自分の心の中にある苦しみをあの人にぶつけて心が軽くなるはずなのに、




私の心は軽くなってはくれなかった。












言葉を吐き捨てると同時にあの人のことも捨てるように見下ろし、背中を向けて歩いてきた。













あの人の泣き顔が忘れられない。






泣き顔まで綺麗だった。














「‥‥なんなのよ‥‥っ」










































朝になった。仕事に行かなきゃ。




‥‥でもまだあの場所から動けずにいた。






流した涙の後が乾いて、型がついている。








そーいえば有給が5日ぐらい余っていた。







どーしても働く気になれなかった私は充電の切れかけている携帯を右ポケットから取り出した。









「‥‥あ、もしもし、おはようございます。〇〇課の伊藤です。ちょっと高熱で動けなくて‥‥有給いただけますか。」
















会社を休むのは初めてだ。






電話を切るとそのまま力が抜けるように腕を下ろした。





自分が今どんな顔をしてるのかもわからないし、お腹が減ってるのかもわからないし、眠たいのかもわからない。




























〝許さない〟





















この言葉を自分に向けて刺した事はあったが、




人から刺されるのは初めてだったのかもしれない。










やっぱり私にはこの言葉がお似合いなのかもしれない。













知らない間に傷つけていた。













妹と同じ歳の女の子を。












奪っていた。





















彼女の居場所を。


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