私を呼んだ。



「‥‥あの‥‥。」

「はい?」

「朝言ってたことって‥‥?」

「本気ですよ。」


少年は当然のような顔をして私を見下ろしている。


「え、でもでも、人違いってことは‥‥?」

「伊藤凛子さんに言ってます。」


そう言えば名前呼ばれたな‥‥


「どうして…私のこと?」

「だから言ってるじゃないですか。7年前から好きで俺の初恋です。」


うわ、そーストレートに言われると照れるなぁ~‥‥


「…でもごめんなさい。私ほんとにあなたのこと覚えてなくて…」

「覚えてますよ。あなたは。絶対。」

「……え?」


少年は微笑むようにそう言うと、


「さ、帰りましょう。送ります。また変な奴らが来たらめんどくさいんで。」

「え、い、いいわよいいわよ!高校生でしょ?親御さん心配するわよ!」

「大丈夫、今日は遅くなると伝えています。ちなみに親はいません。」

「え、それじゃあ、誰に…」

「俺、施設暮らしなんで」


‥‥あれ‥‥また、このフレーズ‥‥どこかで‥‥


「‥‥そうなんだ…それじゃぁお言葉に甘えまして…」


私がそう言うと少年は無邪気な子供のような笑顔で


「ハハハッ!変わってませんね!やっぱり凛子さんだ。」

「え、えぇ!?なになに?」

「いえ…なんでもないです。」

少年は不思議がる私の顔をのぞき見てもう一度ハハッと笑った。




「好きですよ。凛子さん。」





私は少年の言葉に不覚にもドキドキしながら赤くなる顔を隠しながら、
少年の後ろを歩いた。
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