私を呼んだ。
「咲姫‥‥どーした?」
お兄ちゃんは何も知らない。
私のあの人への嫉妬心、あの人にぶつけた言葉‥‥
「‥‥私‥‥」
「‥‥凛子のことか?」
「‥‥え、」
「凛子のこと‥‥そんなに気に入らないのか‥‥?」
驚いた。お兄ちゃんはお見通しだった。
いや、昔からそうだ。
いつも無表情な私の心情の変化に気づいてくれるのはお兄ちゃんだけだった。
「‥‥お兄ちゃん‥‥ど‥‥しよ‥‥私‥‥あの人に‥‥」
「‥‥咲姫‥‥。」
お兄ちゃんは震える私の頭に手を置くと、
「ごめんな‥‥寂しい思いさせてたんだな‥‥。」
お兄ちゃんの言葉は私の胸の奥に染み込み、それと同時に涙がこぼれる。
「‥‥お前も大事な女の子だよ。」
そう言うとお兄ちゃんは私の震える心を落ち着かせるように
ずっと頭を撫でてくれた。