夢見のさだめ
ピタッと笑うのを止めたと思ったら、真面目な顔で言われた。


自分から意味わかんない冗談言っといて……本当、腹立つな!!



「そうむくれた顔をするな。 こんなに笑ったのは久しぶりだ。 やはりエヴァと居ると無駄な気を張らずに済む」



お家の事でゴタゴタしてて、休まる時間なんてなかったよね。


こんな何でもない時間で安らげるなら、力になりたいと思った。



「どうした? 急にしおらしい顔になって。 止めてくれ、君がそんな顔をすると気色悪い」



力になりたいとは思うけど、やっぱり腹が立つことに変わりはない。



「女の子に気色悪いは禁句ですよ」

「ではいつも通りでいてくれ。 そんな顔をさせたくて、一緒の時間を過ごしているわけではない」

「分かりました。 それでは今後も遠慮なく好き勝手させて頂きます」

「あぁ、そうしてくれ。 それから、くどいかもしれないが、叔父上の事に責任を感じる必要は少しもないからな。 私はエヴァに感謝している。 だから、どうか君が気に病まないでいてくれると嬉しい」



私よりも立場上辛い筈なのに、ずっと気を遣わせていたんだと思うと、申し訳なくなった。


「分かりました」と答えると、ドミニク王子は目を伏せ静かに微笑んだ。



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