夢見のさだめ
急いで玄関に向かうと、学校でよく見かける余所行き用の顔をしたドミニク王子が立っていた。


この人何してんの!?



「今日のエヴァは一段と美しい」

「…………」



本性を知っているからか、この笑顔が気持ち悪い。


それに馴れ馴れしく名前呼ばないで欲しい。



「お相手がドミニク王子だってどうして言ってくれなかったの? ママ驚き過ぎて心臓とまっちゃいそうだったわ」



私は今卒倒しそうです。


そもそもお断りしたんですけど、何でこんな涼しい笑顔でうちの玄関に居るわけ?


謎過ぎる。



「ドミニク王子、本日は娘の事をどうぞ宜しくお願い致します」



パパはそう言うと深く頭を下げた。


「この人勝手に来ただけだから!」と言えるわけもなく、ただおとなしくしているしか出来なかった。



「スミス博士、頭を上げて下さい。 帰りも無事に送り届けますので、ご心配なさらないで下さい」



よくもまぁ涼しい顔してそんな事言えたよね。


ビックリだわ。


ドミニク王子に手を差し出され、躊躇いながらもその手を取った。


その時の満足そうな笑みに腹が立った。


家を出て馬車に乗り込みうちが見えなくなると、ドミニク王子は盛大に溜息を漏らした。



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