夢見のさだめ
「なんだその顔は」

「すみません。 つい本音が顔に」

「君は本当に失礼な人だな」



私が失礼なら、貴方は数倍、数百倍失礼な人ですよ。


小さく溜息をつくと、今日一番の笑顔を向けられた。


こ、怖い……。



「確認だが、今になって踊れないなどと言わないだろうな」

「踊れますよ。 父に教えてもらっただけで、こういう場で踊った事はありませんけどね」

「……まぁいい。 私がリードする。 それに合わせてくれればそれでいい。 それ以上は求めない。 兎に角足を踏むな、姿勢を崩すな、下を向くな。 君は私のパートナーだ。 堂々としていればいい」

「……は__」



私が返事をする前にドミニク王子はステップを踏み始め、慌てて足を動かした。


言うだけ言って勝手に始めるとか……本当にこっちのタイミングお構いなしなんだから。


勝手な奴……そう思いながらも、足は驚くほど自然に滑らかに動いた。


悔しいけど初めてでこんなに順調に踊れているのは、きっとこの人のお蔭。




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