夢見のさだめ
手をギュッと握られ、握り返す余裕はなかった。


それでもランスロット王子のこの温もりだけが、今私にとって唯一の味方だと思った。



「ロッドがこの様に申すのも仕方ないでしょう。 私も俄かには信じられません。 もしも嘘を仰っているとなれば、その時は……お分かりですよね?」



ロッドさんも怖いけど、ジェーコブさんの静かな感じも怖い。


けど今の私に話さないなんて選択肢はない。



「嘘だと思えばその時は、その剣で切り捨てて下さって結構です」



ランスロット王子の手にグッと力が籠った。


今度こそ私はその手を強く握り返した。



「それ程まで仰るのであれば、私もロッドもお話を最後までお聞き致しましょう」

「ありがとうございます」



夢で見た事を出来るだけ明確に思い出そうと必死だった。


いつもはなるべく早く忘れたくて、考えない様に気を付けていた夢。


こんなに夢を思い出そうとしたのは初めての事だった。



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