夢見のさだめ
「いつも、夢を見るんです。 雨が降るとか、舞踏会で誰が誰と踊るとか……そういう些細な夢から、誰が襲われるとか、大きな災害でどのくらいの被害が出るとか、恐ろしくて物騒な夢まで……色んな夢を見ます」

「それじゃあ、あの停電した日の事も夢で?」

「うん。 夢で見て知ってたの。 火事になる事も、橋が落ちる事も……人がたくさん死んで、どれだけたくさんの人たちが傷付くのかも……っ、知って、た……っ」



あの時の事を忘れようとしても忘れられない。


未だにあの時の災害はみんなの胸に傷を残しているから。



「君が傷付く事はない」

「ドミニク王子……」

「雨や風、雷……それらは全て自然界の理(ことわり)。 我々がどうこう出来るものではない」

「けどっ、もしかしたら助けられた人もいたかもしれない!」

「仮にエヴァの言葉を信じ、兵が動いたとしよう。 エヴァの言う通り、救える命はあっただろう。 だが代わりに、救助に向かった兵が死んでいたかもしれないな」

「…………」



ドミニク王子の言葉に何も言い返す言葉が見つからなかった。


その通りだと思ったから。


死んでしまった人たちを助けられたかもしれないのにって思うばかりで、その人たちを助けに行ってくれる人たちの事なんて全然考えていなかった。



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