可愛いあの子は美人に弱い
反撃
 ガチャリと、学生寮の自室のドアが開く。

 部屋の主人の疲れ果てた様子に感化されたように、その音も億劫(おっくう)そうだ。


「今日もなんとか逃げ切った……」

 和真が呟きと共にドアノブから手を離すと、あとは自然と戻ったドアがバタンと閉まる。

 そのままベッドに突っ伏したい気持ちを(こら)え、椅子に座るに留めた。
 ベッドに突っ伏したら起き上がれなくなりそうだ。


 ハンターとして身体を鍛えているとは言え、毎日吸血鬼に追い掛けられるとなると疲れも出てくる。

 だが正直なところ、肉体的な疲れよりも精神的な疲れの方が強い。

 全く何故蓮香は自分の血が吸いたいと言うのか……。


「いっそ一度吸わせてみればあいつも満足するか?」

 和真か蓮香、どちらかが諦めないとこの不毛な鬼ごっこは終わりそうに無い。
 今までは単純に吸われるのが嫌で逃げてきたが、少し考えた方が良いかもしれない。

 蓮香の要望通りにするのは(しゃく)に触るし、それが最良の方法とも思えないのでやり方は考えるべきだと思うが……。


 取り敢えず逃げてばかりの今までの状態からは脱しなくてはならないと結論付ける。

 明日からはどんな風に蓮香に対応しようか。
 それを考えながら、和真は取り敢えず制服から部屋着へと着替え始めた。

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