ゼロの相棒《番外編》


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《カトレアside》



「ロイさん、今日も来てくれたのね?」



私は、目の前の男性に声をかけた。


彼はロイ。


大人っぽい黒い髭を整えて、声も低くて、なんだか色っぽい魅力のある人だ。

ロイさんは、六年前のある事をきっかけに、毎日私の元に来てくれるようになった。


ロイさんは、私を見ながら尋ねる。



「まだ、この宿屋の魔法は消えないのかい?」



私は、静かに頷く。


ロイさんは、そうか…、と呟いた。


この宿屋には、ある“魔法”がかかっている。


それは六年前、私の前から姿を消した、
“あの人”がかけた魔法。


あの人と会ったばかりの頃。

私は病気にかかって、外に長い間出れなくなっていた。


そんな私に彼は言った。


“外の世界を見せてやるよ”


そして、宿屋にかけてくれた魔法。


それは、宿屋の天井の装飾が、昼は雲と青空の世界に、夜は星と月が輝く世界に変わるものだった。


まるで、ベットの中にいても、外の世界にいるみたいだった。



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