ゼロの相棒《番外編》
そんなことをしてくれた人に会ったのは初めてで。
本当に嬉しかった。
それから、私の体調は回復して、宿屋で働けるようになった。
でも、この魔法だけは、解かないまま。
どうしても、失くしたくなくて。
彼が私の前から消えてしまってからも、
この魔法だけは消したくなくて。
今でも、宿屋の“空”は変わり続ける。
ロイさんは、私の方を見ながら言った。
「もう…あいつがいなくなってから六年だ。
そろそろ、縛られなくてもいいんじゃないか?」
どくん。
その言葉に胸が鈍く鳴った。
あれから……私はずっと待ち続けている。
もう二度と私の前に現れない彼を。
「この魔法は解けないわ。
……あの人に最初に会った時の思い出だもの。」
ロイさんは、私の言葉に、少し悲しそうな瞳をして笑った。