ゼロの相棒《番外編》
俺は、都市の人々の姿を頭に思い浮かべた。
ここで私情を優先して、遺跡に留まれば、最悪の場合、落盤に巻き込まれる。
死ななかったとしても、怪我をすれば、ガーディアンの仲間に迷惑がかかるし…。
……俺は、ブラッド、という一人の男でもあり、ガーディアンの総隊長でもあるんだ。
指輪は、なかったとしても、俺はここで命を無駄にしてはいけない。
俺は、すぅ…、と魔力を体に込めた。
俺の体が、ゆっくりと宙に浮かんでいく。
………カトレア。ごめん。
このまま帰ることは、本当に悔しいけど
…指輪がなくても…
俺と会って、話をしてくれるよな……?
俺は、ぎゅっ、と目をつぶった。
そして、ぐっ、と体に力を入れる。
パァ…!と、魔法が俺の体を包む。
そして数秒後。
俺が遺跡から消え去る瞬間だった。
「ブラッドさん!」
「……っ?!」
どこか、懐かしい声が聞こえた気がした。
そして、俺の体は、ふっ、と遺跡から消えたのだった。