ゼロの相棒《番外編》



「な……なんで………。」



俺は、まだ目の前の現実を受け止めきれないまま、ぼそ、と呟いた。


すると彼女は、ぽろぽろ、と涙をこぼし始めた。


次から次へと、頬に涙が伝っていく。


俺は、ゆっくりと、彼女の元へと近寄って行った。


その足は、だんだんと速くなっていく。


そして、俺は彼女の前に立った。


動揺を隠せないまま、俺は尋ねる。



「カトレア……君は、遺跡の中に居たんじゃなかったのか?

…俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたんだが……。」



あの崩れ落ちる迷宮の中から、瞬間移動魔法なしで簡単に抜け出せるはずがない。


するとカトレアは、俺の方を見ながら掠れる声で言った。



「私は、遺跡の中には入ってないんです。」



え?


どういうことだ?


あの時、俺は確かに、彼女の声を聞いたはずだ。


< 204 / 357 >

この作品をシェア

pagetop