ゼロの相棒《番外編》
「…ブラッド…さん?」
カトレアの大きな心臓の音が聞こえてくる。
たぶん、俺も同じぐらい鳴っているんだろう。
俺は、今日までこんな風に、感情だけでカトレアに触れたことは、一度もなかった。
遺跡で、カトレアを抱きしめた時から、
俺は変わってしまったのかもしれない。
ただ、今日だけは。
理性をなくして、感情に任せてみるのも悪くない、と
そう思った。
「…本当に、俺でいいのか?」
「!」
俺は、カトレアを抱きしめながら、ささやく。
「カトレアの側に居てやれないし、都市とこの町じゃあ、数百キロも離れてる。
会いたい時に会えないし、仕事のせいで、プライベートな連絡を取れるのは夜だけだ。」
カトレアは、その言葉を聞きながら、少しずつ俺の背中に手を回す。
「……それでも…俺の気持ちに応えてくれるのか…?」
すると、少しの沈黙の後、カトレアは
そっ、と呟いた。
「……大丈夫です。
好きな人とは、あんまり会えない方が、会えた時の喜びが大きいじゃないですか…!
私、待つのは得意ですから………!」