ゼロの相棒《番外編》






私が驚いて彼を見上げると、彼の唇は少し震えていた。




頭を撫でる手も、小刻みに震えている。






………怖がっている……。





なのに、アサギは私から離れようとしない。








「…お前の首輪…。


前に俺があげた、銀の鈴の簪と一緒だな。
…もっと早くに気づけばよかった。」








アサギは、静かに呟く。







アサギ様……どうして、そこまでして……。





アサギ様にとって、猫がどれほどトラウマなのか、私が一番よくわかってる。





震えが治まったわけではないのに、アサギはすっ、としゃがみ込んで


私を優しく抱き上げた。














アサギの体温が、私を包む。







その時、私の体が、パァ、と淡い光に包まれて、ゆっくりと元に戻っていった。







だんだんと腕や足が長くなり、耳と尻尾が消えていく。








そして、完全に元に戻った私を、アサギは、ぎゅっ、と抱きしめた。








「……ホノ。覚えてるか?


俺たちが出会った、あの“雪の日”のことを」






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