ゼロの相棒《番外編》
アサギは、私の瞳を見つめ、いつもより何倍も温かい声でささやく。
「この町の門の前で置き去りにされていた小さな少女は、とても綺麗で、澄んだ瞳をしていた。
……今も変わっていないな。“ホノ”。」
その言葉を聞いて、私は、はっ、と思い出した。
“ホノ”という名前も、アサギ様がつけてくれたんだ。
私とあなたが出会ったあの日
空から舞い降りて、世界を包んでいたあの白い雪と、私の肌の色が似ていると、あなたは言っていましたね。
この名前は、私があなたからもらった、一番最初の贈り物です。
あれから、十三年。
私は、数え切れないぐらいの思い出を、あなたから貰いました。
二十歳になった今年。
「瑠璃色の髪によく映える」と、銀の簪をくれたあなたの顔は、今でもよく覚えています。
私は、ずっと自分の気持ちに気付かないふりをしていました。
命の恩人に、自分勝手な恋心など、抱いてはいけない、とずっと思っていました。
年の離れた、大人のあなたに、気持ちをぶつけて、困らせてはいけないと、ずっと封印してきました。
でも
あなたと離れて、距離ができて、初めてわかったんです。
もう、私は、どんなことがあっても、アサギ様と離れたところでは生きていけないんです。