ゼロの相棒《番外編》
私は、ゼロの体を、ぐっ、と引き寄せる。
「……フィオネ……?」
ゼロが驚いたように小さく私の名を呟いた。
私は、ゼロの胸に顔を埋めたまま口を開く。
「…ゼロ……私を見つけてくれて、本当にありがとう。
もう、相棒の条件を破ったりしないから。」
私の言葉に、ゼロは、無言で私を抱きしめる腕に力を入れた。
“離れさせるかよ。”
言葉ではなくても、ゼロの想いが触れた先から伝わってくる。
私は、ゼロの温度を感じながら目をつぶると
頭の中に、今までの出来事が、どっ、と流れ込んできた。
薬屋でゼロに助けてもらったこと。
この家の庭で、ゼロの背中で泣いたこと。
魔獣に襲われそうになって、ゼロにおぶさって空を飛んだこと。
マリーの宿屋でゼロのせいでドキドキしたこと。
都市でいろいろな人と出会ったこと。
願いの町で、ゼロに別れを告げられたこと。
カフェで、ココアを飲んだこと。
最果ての丘でのキス。
すべてが鮮明に浮かび上がる。