一生に一度
ブーケトスをするために、ドアが開き、外の風が入ってきた、そのときだった。
(――あ、れ?気持ち悪……)
「……ッ!」
強い吐き気にうずくまりそうになった私を、颯斗が抱き止めた。
「和葉…!?」
「気持ち悪…い」
「ちょっと悪い」
颯斗は私を腕に抱えあげ、早足でその場を後にした……
☆☆☆
トイレで何度も吐く私の背を、颯斗はずっとさすっていてくれた。
「もう大丈夫。ありがと。
――なんでだろ?何かいけないもの食べたっけな…」
「和葉。」
「ん?」
「いつからきてない。」
「え?」
「生理。」
「ほ?」
「できたんじゃないのか?」
「は?」
「……察しろよな」
「え。ま、まさか…」
颯斗がにっこり笑って、ありがとう、と言った。
「ここに、新しい命がいるの…?」
「うん」
「颯斗と私の、赤ちゃん。」
「おうよ……たぶんな。」
「ちょっと颯斗!こんなときまでふざけないでよ!」
笑い合いながらも、涙がこぼれそうだ。