お嬢様の秘密III
その後も穂波様との会話は弾んでいく。


「で、翔くんは婚約者はいらっしゃるのではなくて?」


お兄様に婚約者……?


そんな話聞いたことないかも。


いたらあんな女好きに育たないんじゃないかしら………。


「そう言えば聞いたことはございませんわね。女の私はともかく跡継ぎの兄はかなりキーになりますのにね。」


浅井家は秋本家と違って特例がない限り家を継げないから。


代々女は子孫繁栄に徹することしか考えない古い家。


今時もう良いんじゃないの?と親は反発していたはずだけど。


「あら。お母様からよく聞きますわよ。夏菜さんが寝言で優莉様と玲央の名前を呼ぶから婚約者は決めていないとね。」


「え………?」


私そんなことを………!?


顔が火照っていくのが自分でも感じられる。


「玲央は鈍いし感情表現が苦手でしょ?だから夏菜さんが面倒見てくれるのを期待しちゃうわ。」


持っていたカップを一旦置いて、私の頭をそっと撫でてくれた。


「夏菜さんが私の娘になること、待っててもいいかしら?」


それって………。


「………頑張ります、お義母様………。」


そう呼ぶと、穂波様は本当に嬉しそうに笑ってくださった。






「私から1つ聞いてもよろしいでしょうか?」


「何かしら?」


「………あの仕来りのこと、どうお考えですか?」




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