お嬢様の秘密III
結局次の日の朝までお兄様に会わなかった。


「おはよう、夏菜。」


「おはようございます、お兄様。」


しかもけろっとした顔で普通に朝食を食べている。


「お兄様は昨日夕食は食べたの?」


「ああ………夕食を梶原が持ってきてから2人ずつ5ラウンドやってからな。」


…………。


「お兄様は………いつからそんなことをやっているのですか?」


自分でも驚くほど冷たい声だった。


ようやくお兄様は私の顔を見た。


「…………さあな。中学生くらいだったよ。」


いつもの変わらぬ優しい声。


「俺は告白されて付き合ってた女が二股かけてた。その女に告白されてたとき純粋に嬉しかったのに。

俺は良家の子息で価値が上がるから付き合ってただけだ、とはっきり言われたよ。」


そんな………。


「それから女は信用できなくなって適当に遊んでた。………純粋に俺のこと好きになってくれる人を無意識に探してるけど………。

俺は怖いんだよな、また価値だけを求められるのは。だから適当につまみ食いだし、複数でもヤルしね。」


見たことない暗い表情。


失望から抜け出せない………悲しい姿に見えた。


「さあ、仕事行くか。………夏菜、昨日は悪かった。おかげで性欲は削ぎ落とされたみたいだよ。」


………。


「変な男に引っかかるなよ………。」


いつものシスコンな兄に戻って出勤していった。
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