お嬢様の秘密III
いつもなら芸事の練習が入っているけど、今日は夕方からパーティーに参加しなきゃいけない。


親と兄は後で行くから先に参加しておけとの命令。


我が家は最小限しか参加しないけど、今回のやつは本当に規模が大きくて大事らしい。


エスコートの役の玲央とは会場で会うことになっている。


「これ………背中開きすぎじゃない?」


「大丈夫でございますよ。体のラインがはっきり出てお似合いです。」


デコルテが大きく開いている上に、深めのスレットが入っている紫のドレス。


主役じゃないのよ、大丈夫なのこれ?


昨日の件で起き上がれないメイドのおかげで、今日のヘア担当は梶原だ。


器用に髪を編み込んで藤の花で飾られたピンで留めている。


………本当になんでもやるわね………。


「で、メイドたちは大丈夫なの?」


「………さあ。今度はメイドのほうが欲求不満なんじゃないですか?」


「………今日は休みにするわ。だからラブホでもどこでも行きなさい。」


もう投げやりでいいかな………。


「お嬢様、仕える者も息抜きってところでしょうか?」


最近働かせすぎたかもしれない。


掃除やら新年度の準備やらで徹夜させちゃった私たちも悪いわね。


「………梶原もこれが終わったら彼女に甘えなさいよ。」


「ぜひそうさせていただきます。」


さりげなく梶原に彼女がいることを暴露させて、私はようやく微笑むことができた。
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