お嬢様の秘密III
運転手に会場まで送ってもらい、梶原には約束通り休んでもらった。


もう6時30分か。


黒いボレロを羽織っているけどやっぱり寒いな………。


ブルッと1つ身震いしながらフロントへ向かった。







「浅井様ですね。受付いたしました。本日は7階でございます。」


今日の会場のホテルはうちが経営するホテルグループの1つ。


あの受付嬢は気づかなかったみたいだけどね。


「夏菜さん、よろしいですか?」


受付に踵を返し、エレベーターに向かおうとしたとき、後ろから話しかけられた。


「どちら様………って玲央!」


タキシードで身を包んだ玲央は照れ臭そうに私に手を取った。


「本日はよろしくお願いします。」


ゆったりとした動作で、右手に口付ける玲央に思わず顔を背けてしまった。


「………気が狂うわ。普段通りにしてよ。」


「………だよな、俺も自分でやってみて気持ち悪かった。」


サマになってるんだけどね。


………惚れ直しちゃったし。


「でも誰が見てるかわからないから少し他人行儀だからな、我慢しろよ。」


「分かってるよ。女嫌いでパーティーに参加しても誰も寄せ付けなかった御曹司がエスコートしてたら注目されるよね。」


玲央は私やユリと違って何回か情報収集で参加していたみたい。


学園の子からパーティーでの玲央の様子を聞いたことがあるの。


「夏菜、俺から離れるなよ。あと…………よく似合ってるよ。」


耳元でそっとつぶやいて、耳たぶにキスされた。


…………ありがとう


緊張が少しほぐれたみたい。

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