お嬢様の秘密III
今日のパーティーの主催者は、実は理穂さんのお家……安田家。


真理亜様に仕えていたあの子だ。


私たちの意向で何も公表しなかったから表向きはなんの問題もない。


さすがにユリや真理亜様が参加するのは会長様が止めたらしいけど。




ドアマンに軽く挨拶し、玲央の丁寧なエスコートで会場に入った。


………やっぱり見られてる。


自惚れじゃなくて、本当に。


女性で集まったテーブルでこそこそ話してるし、男性は玲央を凝視しているし。


すぐに驚いた空気は元に戻ったけど。





主催者さんに挨拶しないといけないけど混んでるから先に食べようかな。


お昼食べ逃しちゃったし!


「ねえ、玲央、いったん別れない?玲央も挨拶回りあるんでしょう?」


「あるけど………お前、食べたいだけだろ?」


………ギクッ


「………悪い?」


「いや、さっきから鳴りそうになるのを演技でごまかしていたろ?だったら何か食べてから挨拶した方が良いんじゃないか?

ご家族を待ってからでも大丈夫だろうし。」


「親は終わりがけにしか来れないから挨拶は自分でやらなきゃ。」


「俺は代表で来ているから先回ってくる。自分の身は自分で守れよ?」


「了解。最近私も護身術を少し習い始めたから。」


そういうことじゃないんだけどな……と苦笑いされたけど、私の髪が崩れないようにそっと頬を撫でて颯爽と会場に溶け込んでいった。


………いつからあんな男性になったんだろう。


撫でてくれた手は硬い男性の手で頼れる手。


昔より少し低い声で名前を呼ばれるたびにドキッとさせられる。


私も………何か変われているのかな。


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