お嬢様の秘密III
「………あなた、社交のルールを知らないなんて庶民同然よ。しょうがないからこっちから名乗ってあげようじゃないの。」


リーダー格の女の子が名前を名乗ってくれた。


えーっと……聞き流しちゃった……!


「美咲様が名乗ったんだから、あなたも名乗りなさいよ!」


副リーダー………って的な存在?がぐっと身を乗り出し、私の腕をつかみ掛かってきた。


………ちょっと荒いけどしょうがない。


つかまれた腕をすぐに離し、左足を少し踏んでやった。


「何するの!モデルに傷をつけるなんてとんだ無礼者だわ!」


………モデルだったんだ、これだったらユリの方が全然良いんだけど。


「ご挨拶を申し上げます。私、浅井夏菜と申します。」


半歩後ろへ下がったら会場の中央。


そんな目立つところで挨拶したらどうなるか分かるわよね?


「浅井?………そんな名前知らないわよ!」


リーダー格の女の子が大声を出し、私につかみ掛かった。





ピキンと音がしたように会場が凍りついた。


「…………夏菜、何してるんだ?」


後ろから颯爽と現れた玲央が鋭い視線を飛ばす。


「挨拶しろと命令されたのでやっただけよ。なぜかこうやって腕掴まれてるけどね?」


ヒールで思いっきり足を踏んでよろけた隙に玲央に飛び込んだ。
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