お嬢様の秘密III
「夏菜、今日は上に部屋を取ったから挨拶したらゆっくりしろよ。」


玲央に抱きしめられたままの私の肩をそっと撫でてカードキーをバッグに差し込んだ。


「親はやっぱり間に合わなかったみたいで、俺は職場を抜けてきたからこの普通のスーツだ。

さすがに失礼にあたるから挨拶は夏菜に任せたぞ。」


「うん………お兄様。」


抜けてきてくれたんだ………。


仕事は律儀なんだけどな………女の子に関してはルーズすぎる。


「玲央、妹をよろしくな。」


玲央をひと睨みしてパーティーの人混みの中に消えていった。






「浅井様、ようこそお越しくださいました。」


玲央と一緒に主催者の元へ。


………なんか舐めまわすような視線で気持ち悪い。


「ご挨拶が遅くなって申し訳ございません。本日はお招きいただきありがとうございます。」


本当は挨拶は主催者がするんだけどな………。


挨拶回りに行った時は相手からしてくれたし。


「ところで、ご両親は?」


「都合により来れませんので私は代理で来ましたわ。………なにかご不満でも?」


「い………いいえ………。何もございません。」


ハンカチを取り出して顔の汗を拭き始めた。


でもやっぱり視線が気持ち悪い。


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