お嬢様の秘密III
翌日、私は玲央とホテルで別れて浅井家が経営する会社へ向かった。


「浅井翔を呼んでいただける?」


お兄様の名前を出した途端、受付嬢の眉がピクッと動いた。


「失礼ですが、翔様とはどういったご関係で?」


………お兄様を名前で。


さては………お兄様、手を出したな?


言い方が若干キツくなっていることに気づいていない。


「浅井夏菜、妹よ。ご納得かしら?」


ちょっときつめに言ってみると、受付嬢は案の定慌てて取り繕い始めた。


「妹様でいらっしゃいましたか!……存じあげなくて申し訳ございません。すぐにアポを取ります。」


存じなくて当たり前よ………。


受付嬢がパーティーに出席なんてしないし、そもそも私は少人数にしか知られていないし。


昨日ようやく私を知った人が増えたのに………。


「すぐに専務室へお通ししますとのことです。」


「ありがとう、梶原行きましょう。」


来社リストに名前を登録し、さっとその場を離れた。


会社には場違いなワンピース姿だから社員からジロジロ見られちゃってるし……。


昨日のドレスで来なくて良かった………。


私が寝ているうちに着替えを用意してしまう玲央と梶原も不思議だけどね。
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