お嬢様の秘密III
「で、ユリ様。この4月から私が学園長に就任することになりました。」


お母様の代わりってことか。


裃学園は秋本家と山岸家の両方の承認が得られた人なら学園長になれるという暗黙のルールが存在するらしい。


「渚は頼れるわ。あえて弱点を言わせてもらうなら少し後ろ盾が弱いところだと思うわ。」


『秋本グループの一会社の役員の奥様』ではカーストの一番下にも満たないんじゃないのかな.....


私は少し首を捻った。


「だから渚には生徒に対してあまり干渉はしなくていいとお伝えしたわ。だから私の時のようにはいかないってことだけ頭の片隅にでもおいておいてほしい。」


「わかりました。お母様。」


知らなかったとはいえ、お母さまの影響力に頼りすぎていたな...と少し反省した。


一年生の文化祭とか特に。


「まあでもユリ様。あまりお堅く考えないでください。どうしても力を使いたいときはご自分の力をお使いになればよろしいのですよ?」


「自分の力...?」


「莉依紗から聞いてるけど、秋本家に通って少しづつ仕事のお手伝いもなさっているのでしょう?だから秋本家の力を使ってもよいはずです。」


困ったときは頼ってもよいと言っていたお祖父さまたちの顔が浮かんだ。


でも...


「万が一、と思っていますから。」


念を押すようにゆっくりと話した。


「....さすが莉依紗の子どもね。」


渚さんは複雑そうな顔で、あいまいにほほ笑んだ。

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