お嬢様の秘密III
「ユリにはカウントダウンパーティーの前に話したし、玲央は小さい頃から耳にタコの話だ。」


そう会長様は話し始めた。


「いや、誠一郎。ここは当主である私が話すからしばらく黙っててくれないか?」


「そうだな。じゃあ私は外に出てるから終わったらいつもの合図だ。」


会長様、部屋から出てしまった………。


「すまんな、浅井さん。ここは私らの家の問題でもあるからな。」


完全にご当主モードに入った広大さん。


「浅井さんなら分かってくれると信じているがな………。」












「ねえ、夏菜。大丈夫?さっきからぼーっとしてるよ?」


「え?あ……ごめんね。ちょっと頭が痛くて……。」


「風邪のひきはじめかも。後でいつもみたいに私に風邪移していいからね。」


そっと背中を撫でてくれるけど、寒気が酷くなる。


本当に風邪ひいちゃったのかな………。


あの資料室を出た後の記憶が曖昧になっている。


私は今リムジンで帰るところらしい。


「うん。じゃあ後で私の部屋に来てね、ユリ。」


ユリがこの話を聞かされているなら………。


私に向けてくれているこの笑顔の下で何を考えているの………?


ギュッとユリの手を握った私に何も聞かず、握り返してくれた。


-夏菜side end-

< 4 / 67 >

この作品をシェア

pagetop