お嬢様の秘密III

高澤家と秋本家

-葵side-


時は少し戻りユリたちと別れて実家に戻った時のことからだ。


海外支所からの連絡を待っている間、俺は休憩がてら携帯を確認することにした。


「北原、何か連絡は来ていないか?」


「いいえ、特に来ておりませんよ。」


「そうか………。」


実家に戻ればすぐに仕事を押し付けられ書斎にこもる日々。


休憩時間を見つけてユリと連絡を取ろうとしたが、アイツは出なかった。


「おかしい……。電話が繋がらない。」


この四月から正式に俺の秘書になる予定の北原だが、なんとなく……俺の勘だが信用できない。


ババアの秘書の息子ってだけでババアの息がかかっている気がするし、実際のところそうではないかと思っている。


軽口で話せる関係を保ちつつコイツを調べるようにはしている。


ちなみに高澤家の中ではユリのことについて一切話しを触れないようにしている。


ユリが悪いじゃなくてババアが悪いんだがな。


「葵様、休憩は終わりでございます。次はこちらを………。」


よたよたと大量の書類を抱え、どさっと言う音を立てて俺の机に乗せていく。


チッ。


「あのクソババアどんだけ溜めてんだよ。」


「お忙しい方なのではないでしょうか?」


「…………お前が知った口聞くな。」


机の上に投げ出された書類から何気なく取った書類に思わずぐしゃっと紙を握りつぶした。

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