春の夜
しかし、長旅で疲れたな。
水が飲みたい。
たしかこの近くには池があったはず。
「ユキ、近くの池に水を汲みに行ってくる」
『了解』
ユキの返事を聞き、俺は池の方向へと歩き始めた。
────
「相変わらず綺麗なところだな」
思わずそう呟く。
ここの池は妖精が住んでいると伝えられている。
だが、妖精は滅多に人に姿を見せることはない。
王子である俺ですら妖精を見たことはまだないくらいだ。
「妖精たち、少し水をもらうぞ」
そう言い、水筒に水を汲む。
ふと顔を上げた時、白い何かが見えた。
立ち上がって見てみると、どうやら人が倒れているらしい。
「っ!!あれは……」
近づいてみると、その人らしきものの周りにたくさんの光が集まっていた。