ただ、キミのことを好きでいたいだけ。




私は、向かってきた両手をひらりとかわし、


低く構えて相手の腰辺りに踏み込み、


体を沈めて、腕をとり、おぶるようにして肩越しに投げた。




……いわゆる、背負投げってやつだ。




しかし、ヤツは驚くこともなく空中で体制を整え、腹筋を使い、足の裏で着地する。



……負けてたまるものか。



間髪入れずに、左足を踏み込み、左手で腕を掴む。


相手を引き寄せ、右足を崩し、真後ろに倒す。



しかし、ヤツはくるんと体制を変え、しゃがみこみながらも綺麗に着地した。


ふうっと息をはき、安堵している。



あまいっ!




完全に避けきったと思っているヤツを前方に崩し、右足で左足を払いあげる。



「うおっ!?」


さすがに相手も驚き、声をあげる。


しかし、これまた器用にバランスを取り戻し、ふらつきながらも足を地面に着けた。



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