怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
プロローグ
マンションのエントランス
「右OK左OK」
コソコソコソッ
どう見たってボブではなくおかっぱに近い真っ黒の髪。
古臭いメガネに顔の半分近くを隠すマスク。
型にはまったリクルートスーツにぺったんこの靴。
人の好みは千差万別。
それだけならば見過ごすけれど
執拗に辺りを見回し今だとばかりに飛び出す姿。
ドスンッ
下を向いたまま飛び出してきた女と1人の男が出会いがしらの正面衝突。
どちらかといえば、男の方は確信犯。
「す…すみませんッ」
下を向いたまま狼狽え頭をペコペコと下げ続ける不審な女
「あんた何者?」
上から降る言葉が強く感じているのは怒りを含んでいるからか。
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