怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
冷えたグラスに注がれるビール。
カツンッといい音が室内に響く。
いったいどういう事と聞きたがってる二人の視線
「じゃあ俺が話すよ」
そういうと瑛太は、柊哉は美祈が同じマンションだと気づいていた事
思い悩むといけないから黙っていたこと
それから、朝の様子があまりにも可愛いから言わなかったことを伝えた。
まずはそっちの問題から片づけようとカニすきを勧めながら
「普通は、気にしない」
当然の事のように話した。
「そうなんですか?まずくないですか?」
案の定引っ越しを考えるわけだ。
「戸建てだったらどうすんだよ。引っ越すのか?」
「それはそうですけど…」
「あえてみんなに言う必要もないけど、聞かれたら答えてもいいだろ。誰も聞かないと思うけど」
笑う柊哉に安心して美祈も笑う。
「朝の不審な行動も、もう必要ないから」
「あ…はい。助かりますって…もっと早く言って下さいよ」
パタパタと恥ずかしさのあまり暑くなった顔を覚ますように美祈が手で顔を扇ぐ
「だって、面白くて可愛いから」
「ひどいッ」
そういったときには美祈も開放的に笑っていた。
そして、美祈のこの姿についても瑛太は知り得る事を丁寧に柊哉に話した。
柊哉は黙って瑛太の話を聞き
「それで、目立たないよう目立たないようしてたのか」
「あ…はい。でも、もじゃ男さんのお蔭で…あ」
もじゃ男と言ってから慌てて口をおさえると
「俺、もじゃ男」
嬉しそうに瑛太は自分を指さした。