怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
フッと鼻で笑った柊哉がそれで?と話しの続きを催促。
「あ…はい。お蔭で少しずつ自信を取り戻してるところというか、元気をもらって頑張ろうって思えてます」
「瑛太、お前はいつから知ってた」
「写真撮りにつれていったとき」
鍋の湯にカニをくぐらせていた柊哉の手が止まる。
「秘密ってこの事か」
「ウィ」
柊哉も納得した顔を見せた。
「みんな驚くぞ」
パクッと口に入れながら柊哉が美祈の顔を見た。
だけど首を左右にふり、美祈は困ったという表情を見せる。
それはきっとまだ決心がつかないという意思表示。
美祈は上司の前とあって言いたい事もうまく言葉が出てこない。
時間がたてばたつほど戻りにくくなるのでは?
確かにそれもある。
「柊ちゃんちょっと待って」
止めたのは瑛太。
美祈の顔を一度見て微笑んでから
「ここでは、この座敷童は俺の友だち。俺が柊ちゃんに紹介した友達だから。比重はそっちにおいて」
「わかった。友だちとして話しをしよう」
「座敷童、お前もだ」
「え…はい」
多くのモデルたちを見てきている瑛太にとって、座敷童から素の美祈へ戻るのは簡単だと伝える。
女って化粧ひとつで変わるもんだとゴクリとビールを流し込んだ。