怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
知りたいか。教えてね
美祈を送った瑛太が玄関からリビングへ入ってくると
「瑛太ヒゲ剃ってやれよ」
含み笑いの柊哉の心意を探る瑛太。
「初心者にヒゲはキツイって」
「ば…バカ言え」
言わんとする事がわかり今さら顔を赤くする瑛太を面白がる。
「柊ちゃん。俺の理性を木っ端みじんに崩さないでくれ」
「瑛ちゃんいつからそんな弱気なの?」
「からかうな。俺は今、手を繋ぐ事さえ拒否られねぇかってドキドキなんだよ」
真剣だから面白い。
「あれだな。何も知らないってのは瑛太がこうだって言えばそういうもんだと思って何でもするかもしれねぇな。うん、ヒゲの感触も最初からならありか?」
終いには凄い勢いでクッションが飛んできた。
「おい、瑛太」
「今度は何だ」
「お前が惚れたのは座敷童の芹沢かあの可愛い芹沢のどっちだ」
「それがよー。座敷童なんだよ。あの姿に違和感あんだよ柊ちゃん」
瑛太の答えにさすが親友だと握手を求める。
「確かにむちゃくちゃ可愛いよな。俺も可愛いと思う。だけど座敷童はアイドル的な存在だからな」
「お前のアイドルじゃねぇぞ」
「絶滅危惧種はみんなで保護だ」
当分、話題には困らないと柊哉が思えば瑛太も思う。
「柊ちゃん。ヤキモチもほどほどにしてね」
「あ?」
「俺だけ幸せになってごめんよ」
「瑛太!」
何を言っても喧嘩になるわけもなく並んで座ってバカ笑い。
「風呂入ってくるわ」
「一緒に入る?背中流そうか?」
「きもっ…お前のハートの絵文字ぐらいきもっ」
悪ふざけもほどほどに。
平日の夜はこのへんで。
柊哉が出ると瑛太が入りベッドにもぐるとどちらもぐっすり夢の中。