怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】



そっと美祈の肩を抱き寄せるとドキッとしたのか身体を強張らせたが


「賭けはね、お前の可愛さに俺がどこまで理性を保てるかって勝負」


「へ?」


「大丈夫。お前のペースに合わせる。マコが階段上がればって言っただろ?そういう意味だ」


「あッ…なるほど。よろしくお願いします」


ペコリと頭を下げるからもう可愛くなって理性の綱が緩み始める。



頬に手を添えると


そう。もうちゃんとわかる。


近づけばそっと目を閉じ


チュッと軽く唇に触れると恥ずかしさから俯きたいのを我慢して応えてくれる。


「チクチクしないだろ」


「うん」


何度も繰り返し次第に深くなっていく口づけに戸惑いながらも瑛太のリードに合わせる。


その頑張っている事がまた可愛くて呼吸をさせてあげる間しか離せない。



「鼻で息しろ」


「頭真っ白…」


最初に教えた通りにちゃんと胸にピッタリとくっつき恥ずかしさを隠す。


最初が肝心


まさにそうだなと美祈を抱きしめながら瑛太は小さく笑った。



~♪


音がしたのは瑛太のスマホ



「残念だが今日はここまで」


笑いながら立ち上がると


「ガールズトークだろ?」


美祈もにっこり笑って頷いた。


玄関で靴を履いて


おやすみと額にキス


ドアを開けて待っていれば3階に止まった音が聞こえるエレベーター。



泣きはらした目をしながら右手をあげて


「おやすみッ」


「おぅ。おやすみ」


止まっているエレベーターに乗り込み5階のボタン



5階は5階


3階は3階で繰り広げられるトークタイム。



話しの内容もテンションもまったく違っているけれど


気の合う親友と過ごす時間というのは変わらなかった。





< 162 / 241 >

この作品をシェア

pagetop