怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「おい、お前ら座ってんなよ」
もじゃ男が笑いながら手招きしてくれた。
手伝えと言われる事を嬉しく思うのは変かもしれないけれどこの時はもやもやが吹き飛んでしまうぐらいに嬉しかった。
「邪魔ですから座ってて下さい」
マコが果歩さんに言うともじゃ男と課長は思いっきり吹き出して
「もじゃ男、我慢してんだからね」
言いながら睨んでいた。
テーブルに並べ終わり冷蔵庫の中からビールとグラスを取りにいった私とマコが戻るといつもの私の席には果歩さんが座ってしまい
お誕生日席のようなところが私なんだと思った。
何か言いだしそうなマコに今日だけだからいいよと言ったのももじゃ男の友だちだからでご飯を食べる場所ぐらいで怒るのも大人げないと思ったから。
「おい、お前がこっちこいよ。俺が誕生日席に座る」
「えッいいよ。ここって主役みたいじゃん」
もじゃ男を見て笑いかけるともじゃ男も笑う。
注がれたビールで乾杯するけど
戦闘開始かいってマコが思わず呟いたほどあからさまだった。
身体はもじゃ男の方を向いてグラスをぶつけ
課長やあたし達とはグラスをあげて乾杯の真似をするだけだ。
「そういうこと?」
マコが課長に言った。
「昔な」
「そうなんだ」
これは、私にもわかった。
もじゃ男を独り占めするかのように話している果歩さんの前で私たちは3人でコソコソと話した。
「でも昔からあの道は一方通行だ」
「今は完全に行き止まりだよ」
「迂回路探してるのかも」
私たちが持ってきた料理には手もつけないから完全にお皿をこっち側にひっぱって3人で食べた。