怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「会ってないかな。少なくとも、もじゃ…じゃなくて瑛太さんからは会おうって言ってないと思う。もし会うなら会う理由とか心配しないでって言ってくれると思うから。私と知り合う前の事は知らないし聞く必要もない?のよね?」
間違ってない?という感じでもじゃ男を見ると優しい顔で笑いながら
「俺は、会いたい女にはすげぇマメだ。メールの催促すんだぞ俺が」
「必死に絵文字メール打つよな」
「あははは」
マコが大笑いを始め
「全然絵と文が合ってない時とかある」
それは思い当たるから私も吹き出した。
「こんな事を言いたくないけど、何年の付き合いだと思う?」
また私への質問だ。
でも恋愛経験がなかった私でも、付き合いの度合いっていうか…
長くてもあんまり知らない事や短くてもたくさん知ってる事があるぐらいわかる。
「果歩さんの知らないもじゃ…瑛太さんがヒゲがあったことも剃った事も私は知ってる…。あと、朝はパンが食べたい事も朝日より夕陽がスキって事は果歩さんは知ってますか?年月は全然短いけど果歩さんが知らない事をたぶん私は知ってるような気がします」
「瑛太はつい最近までヒゲがあった。だからな、ここ数年に会ってるやつは必ずヒゲどうしたって言うんだわ。芹沢はそこに気づいたか」
「いやぁあたしは美祈と長いけど、もじゃ…瑛太さんと夕陽だけじゃなくて朝日まで見て一緒に朝食を食べたことは知らなかったわ」
「え?」
「そう聞こえたよな。ヒゲは芹沢が痛いから剃ってって言ったってな」
「違うってばッ」
「果歩が知らない俺を知ってるって言ったな」
もじゃ男まで笑う。