怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】


すっかり黙ってしまい落ち込んで見える果歩さん。


私にとって不愉快にも感じたけれど、スキって気持ちを持ってきたのは事実なんだと思う。


だから今、傷ついているんじゃないかと思う。


「もじゃ男」


小声で名前を呼ぶと軽く瞼を閉じてから口元を少し緩めて頷くと



「果歩、いい思い出にしておこう。あの頃の事は、俺にもいい思い出だからそのままとっておくな」


「お前、いい歳なんだからさっさとこんなヤツに見切りつけて他探せよ」


「柊ちゃん。こいつこんなヤツの女」


あたしの肩をグッと引き寄せた。


黙っていた果歩さんが


「たまたまここに来たなんて嘘。笠原に聞いて知ってたの。踏ん切りつける為にどうしても会いたくて。こんな嫌な女するつもりなかったんだけど若くて可愛い女の子たちに焦ったのかも。あぁ今日ここで頑張らないと私の想いが終わっちゃうって」


「気が済んだか」


「済まなくても少しも勝ち目がないのはわかった」



果歩さんは私とマコに小さく会釈をすると帰って行った。


今までも会う必要がなかったって事はこれからも会う事はない。


言えるのはそれだけだ。

思い出は大切にする。もじゃ男は果歩さんにそう伝えていた。


課長も元気で幸せになれよと肩を叩いていて柊も幸せそうねって言われてた。


私ともじゃ男はそれが可笑しくてやっぱそう思われるよねって笑った。



果歩さんの姿が見えなくなると


「もじゃ男!ぶっ飛ばさなかったあたしを誉めて」


「こいつプルプル震えながら耐えてて笑いそうだった」


マコと課長はもう笑い話にしていたけれど


私は、きちんと話しをしようと言われてもじゃ男とそのまま私の部屋へ行った。





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