怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】

大学の頃は確かに仲のいいメンバーの一員。


瑛太にとってはそれに過ぎないが果歩にとってはスキな人。


何度となく瑛太に想いを打ち明けるけれど遊ぶ女がいくらでもいたあの頃に大学の友だちと付き合う気はない。


果歩が真剣であるからこそ瑛太は面倒で遊びでも付き合えなかったと美祈に伝えた。



「遊びで付き合うっていうその感覚は私には理解しようと思っても理解出来ない」


美祈にとって決して面白い話しではない。


「どんなに反省してもバカな俺の過去は消せない。だからお前を大事にして真面目に生きてくとしか言えないんだよ。それが俺の過去に対するお前への精一杯の誠意」


「うん。それでいい。たぶん一生理解出来ないから謝られても困る」


私が笑うと口角を少しあげてもじゃ男も笑う。



「嫌な時間だったろ」


「も―――ッ超最悪だった」


果歩さんがギューッとか抱き付いた時、帰ろうかと思ったって頬を膨らませると両手を広げて


「ほらいくらでも抱き付け。俺はお前だけのもんだ」


その言葉はやっぱり嬉しくて、もじゃ男の胸に身体を寄せると


「悪かった。ごめんな。これは今日の謝罪…会ってないって気づいくれてだろ。信じてくれて嬉しかった」


「信じてるわよ。恥かいたけど」


「プッ」




あの時、もじゃ男は、あたしと果歩さんの胸の痛みをどちらも最小限度になるよう考えていたんじゃないかと思う。


普段の乱暴に思える言い方じゃなくてすごく言葉を選んで話していたから。


もし、私だけを守るような事をしたら嬉しい反面どこかでガッカリしたかもしれない。


一番が私であってほしいけれどそれでも私の事は後からもこうやって包んで癒してくれるから。


それが私の知ってるもじゃ男だから。








「もじゃ男は、下で懺悔中かね」


「だな。お前リベロとしてもいけるねぇ」


「座敷王子のトスもなかなかだ。あたしたちってマルチね。自分の恋愛以外」


「一緒にすんな」



「しかしやるねぇ。俺にもいい思い出だからそのままとっておくなんて言われたらさ、ぐうの音も出ないって。振り方別れ方講座とかやったらいいのに。」


「彼氏が出来たら必要な時に俺が教えてやるよ」


「いらない。彼女がいない人じゃ説得力ないもん」



こちらは温かいお茶を飲みながら湯呑で乾杯。

ホッと一息。





< 172 / 241 >

この作品をシェア

pagetop