怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】
「俺もロッキーも男と女をまるで感じてないんだ」
「プッ」
「俺は男としてどうなってんだよ」
「仏に近づいてんじゃね?」
「嬉しかねぇよ」
通勤途中で女を見てどうかとか
社内でどうかとかいろいろ質問をされたがそういや女って視点を最近持っていない気がすると真顔で応える柊哉。
瑛太も、自分もそうだったと笑いながらいくら綺麗なモデルの写真をとったところで被写体でしかなく昔なら酒や食事に誘ったけどそんな気にもならなかったらしい。
「芹沢にはどうだよ」
「おい柊ちゃん。何か中学生の話題みたいだぜ」
「もう俺はそのレベルだと思う」
あはははは
真剣な顔つきだから笑いが止まらない。
「あいつは、俺にとってはやっぱ女だよ」
「最初は違っただろ」
「最初は座敷童っていう生物だったね。でも今は女」
それはいつからだとか何がきっかけだとか
いつになく捲し立てて聞くぐらい自分が不安らしい。
「でもよ、すぐ抱くに直結してたのがそこまでの距離がすげぇ長くなったのは感じるけど苦痛でもないっていうか」
「は?女だと思ってても?」
「抱きたいとは思う。たぶん今すぐにでも。いや我慢できるって感じかね」
「嘘だろー」
「ガツガツしなくなってんだわ。一度味しめたらもう無理かもしれねぇけど」
「後でのお楽しみってパターンか。修行並だな」
「まぁきっかけを失ってるとも言うか」
柊哉は考えた。
「あっ、俺、そういや芹沢には女感じたわ」
「聞き捨てならねぇな」
それは、エレベーターの中。
美祈の洗い立ての長い髪からシャンプーの香り。
「そん時だよ。そん時は女を感じた。だけどそん時だけだな」
「匂いフェチ?匂いで反応する?そんな体質になりつつあるとか」
「おいおいッ」
いつもよりずっと柊哉が真剣だからどうにも瑛太はにやつきが止まらない。